【天衝】頭と耳の間をめぐる胆経の気を整えるツボ

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天衝(てんしょう)とは
天衝は、足の少陽胆経に属する経穴で、耳の上部後方、耳介の最上端の後ろから指1本分(約1.5寸)上の髪の生え際付近に位置します。耳の後ろ側から頭頂部へ向かう途中にあり、頭部の側面でやや後方寄りのポイントです。
「天」は天の気、「衝」は突き上げるエネルギーを意味し、天衝とは、上へと昇る胆経の気をここで調整し、穏やかに流すための経穴という意味を持ちます。
このツボは、耳・頭・首をつなぐ気血の交差点として、頭部の熱や張り、耳の不快感を緩和するために用いられます。
効果と応用
天衝は、耳鳴り、めまい、頭痛、側頭部の張り、難聴、眼精疲労、思考過多、不眠、情緒不安定などに対して使われます。
特に、頭に気がのぼりやすい体質や、耳の奥に違和感がある方、ストレスでこめかみが張る方にとって、天衝はそのバランスを整える助けとなります。
また、顔面神経や内耳との関係も深く、顔面の左右差や耳の疾患の補助ケアとしても活用されることがあります。
主な効果
天衝に期待される主な効果は、側頭部から耳の後ろのこわばりの解消、耳鳴りや難聴の緩和、頭痛やのぼせの沈静、眼の奥の違和感の緩和、精神的な緊張の調整です。
とくに、耳と頭の境目に起こる不調や、感覚過敏・疲労による神経の高ぶりに対して、天衝は優れた気血調整の働きを持ちます。
また、完骨や浮白と組み合わせて使うことで、耳周囲から後頭部のラインを穏やかに整える相乗効果が期待されます。
注意点
天衝は頭部の繊細な部位に位置しており、強く押すと不快感や軽いめまいを生じる場合があります。
セルフケアでは、指の腹を使ってやさしくなでるように円を描くマッサージが適切です。圧迫ではなく、リズムよく触れることが大切です。
耳や頭に強い痛み・腫れ・違和感があるときは、無理に刺激せず、医療機関での診察を優先してください。
日常生活での活用法
天衝はセルフケアにも適しており、入浴後や就寝前に耳の上部後方をゆっくりなでるようにマッサージすることで、頭の緊張や耳のこもり感がやわらぎます。
蒸しタオルを耳周囲に当てたあとに、天衝を中心として耳の後ろをやさしく指でトントンと刺激するのも、リラックス効果の高い方法です。
仕事や勉強で脳を酷使したときには、天衝を含む側頭部のラインを整えることで、クールダウンがスムーズになります。
現代医学からの評価
天衝の周囲には、顔面神経の後枝、後頭神経、浅側頭動脈の分枝などが分布しており、軽い刺激が神経の過緊張の抑制、頭部血流の改善、自律神経の安定化に役立つとされています。
鍼灸や徒手療法では、耳鳴り、側頭部の頭痛、不眠、めまい、神経性ストレス症状に対して、天衝が補助ポイントとして広く活用されています。
東洋医学では、天衝は昇りすぎた陽気を穏やかに降ろし、頭と耳の巡りを調えるバランスの要所として位置づけられています。