【天髎】肩上部のこわばりと呼吸の巡りを整えるツボ

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天髎(てんりょう)とは
天髎は、手の少陽三焦経に属する経穴で、肩のやや後方、肩甲骨の上角に近い場所に位置します。
正確には、肩峰の後縁と上腕骨の間、肩をややすぼめたときにできるくぼみに取ります。
「天」は上方、「髎(りょう)」は骨のくぼみを意味し、天髎とは、天の気(上焦の気)を巡らせる肩の骨のくぼみにあたるツボとして名付けられています。
この部位は、気の通り道である三焦経の気が胸部・肩・腕にかけて広がる要所にあたり、肩の動きや呼吸の広がりとも密接に関係しています。
効果と応用
天髎は、肩こり、肩の可動域制限、肩甲骨まわりの緊張、腕のだるさ、首肩の疲労感などに対して広く用いられます。
とくに、姿勢の乱れや精神的な緊張、長時間のデスクワークによって肩がすくみやすくなっている方に対して、天髎を通じて肩上部の滞りを解消し、全身の気の流れを整える目的で使用されます。
また、呼吸が浅くなっているときや、胸のつかえ感、疲れやすさを感じる場合にも、肩から上半身への気血の巡りを促す天髎の働きが役立ちます。
主な効果
天髎に期待される主な効果は、肩上部のこりや痛みの緩和、腕の重だるさの軽減、胸の緊張の解消、呼吸の深まりなどです。
また、肩甲骨周囲の滞りが軽減されることで、姿勢の改善、慢性的な肩こりの予防、胸郭の拡張による息苦しさの緩和にもつながることがあります。
日常的に肩をすくめるクセがある人や、精神的にプレッシャーを感じやすい体質の人にとっても、天髎の調整は非常に有効です。
注意点
天髎は肩の関節と筋肉の接点に近いため、強い押圧や無理なストレッチは避けるべき部位です。
セルフケアでは、肩の力を抜いた状態で軽く撫でるようにマッサージするか、温熱刺激でやさしく緩めるようにします。
また、五十肩や頸椎症などが疑われる場合は、無理に刺激せず、医療機関での診察を優先してください。
日常生活での活用法
天髎のセルフケアでは、入浴後に肩を後ろに軽く回しながら、手のひらで肩の後方を包み込むように温めたり、軽く圧をかけて緩める方法がおすすめです。
また、呼吸が浅いと感じるときには、背筋を伸ばして天髎のあたりに手を当てながら深呼吸を繰り返すことで、胸郭が広がりやすくなり、全身のリラックスにつながります。
肩甲骨まわりが硬く感じるときには、肩甲骨を寄せたり開いたりする動作に天髎の意識を加えることで、より深いケアが可能になります。
現代医学からの評価
天髎周辺には、僧帽筋、棘上筋、肩甲挙筋といった肩関節を支える筋群が走行しており、ここに軽い刺激を加えることで、筋緊張の緩和、血流改善、肩の可動域の回復が期待されます。
また、交感神経が優位になっているときに首・肩が緊張しやすい傾向があり、天髎を含む肩部のツボ刺激が副交感神経優位への切り替えを促す補助療法として注目されています。
東洋医学においては、天髎は三焦経に属し、気の巡りを肩から全身にひらくための「上焦の出口」ともいえるツボであり、ストレスや疲労の影響を受けやすい上半身の解放点として重視されています。