【肓兪】腹の奥を癒す腎経の重要ツボ

目次
目次がありません
肓兪(こうゆ)とは
肓兪(こうゆ)は、足の少陰腎経に属する経穴で、臍(へそ)の下0.5寸、前正中線から外方0.5寸の位置にあります。
「肓(こう)」は臓腑の間にある中空の空間を指し、「兪(ゆ)」は通じる・流れるという意味があります。
つまり肓兪とは、内臓と内臓のあいだに気を通すツボであり、東洋医学における“身体の深奥”に働きかける特別な経穴とされています。
腎経が体の深層を通ることから、肓兪もまた身体の核心部に近い調整点として用いられ、古典にも頻繁に登場する実力派のツボです。
効果と応用
肓兪は、腎虚に関連する下腹部の症状、婦人科疾患、泌尿器の不調、精神的な不安定など、非常に広範な症状に対応できるツボです。
とくに、月経不順、月経痛、不妊、頻尿、排尿困難、性機能の衰え、腹部の冷えや重だるさといった症状に対して、腎の根本を補いながら、気血のめぐりを整える働きをします。
また、肓兪は身体の“芯”に近いため、なんとなく調子が出ない、エネルギーが湧かない、慢性的なだるさや不安感など、原因のはっきりしない不定愁訴にも用いられることが多いです。
主な効果
肓兪には、下腹部の冷えや腹痛、月経異常、性機能低下、精神的な不調の緩和、腹部内臓の活性化といった幅広い効果が期待されます。
とくに、体が冷えやすく、かつ気力が出にくいタイプの人には、腎気とともに身体の中心から温める作用が働き、体温調整やエネルギー循環のバランスを取り戻すサポートになります。
また、肓兪は**婦人科系と泌尿器系をつなぐ“交通の要”**として、排尿・排便・生殖・消化のバランスを整える施術の要点としても活用されます。
注意点
肓兪は内臓に近い腹部中央部にあるため、鍼灸や押圧は慎重に行う必要があります。
自己流で強く押すのは避け、鍼灸師など専門家による正確な位置取りと軽やかな刺激を心がけることが重要です。
また、妊娠中や強い腹痛、婦人科・泌尿器疾患が疑われる場合は、施術を控え、医療機関での診察を優先してください。
日常生活での活用法
肓兪はセルフケアでも触れやすい位置にありますが、優しい温熱刺激や軽いタッチでのケアが最も効果的です。
特に、冷えや疲れが溜まっているときに、肓兪の位置を両手で包むように温めながら深呼吸することで、内側からじんわりと身体がほぐれる感覚を得られる場合があります。
また、腹巻やホットパックを用いて肓兪を含む下腹部全体を保温することで、腎気を補い、自律神経やホルモンの安定にもつながるとされています。
現代医学からの評価
現代医学では、肓兪のようなツボの生理学的な正体は明確には説明されていないものの、腹部への適切な温熱・触圧刺激が副交感神経を活性化し、内臓機能や血流、自律神経のバランスに作用する可能性が注目されています。
また、鍼灸の臨床研究では、肓兪を含む腎経腹部ツボへの施術が、不妊治療・更年期症状・泌尿器疾患の補助療法として有効であることが報告されています。
東洋医学では、肓兪は人の“芯”を整えるツボとして、古代から現代に至るまで多くの流派において重要視されており、体調全体を整える起点として用いられています。